木田元

「爆問・学問」録画を見た。ラジオで放送を聞いていたのだが、テレビで見るとまた違った。木田先生の本は、最終講義などを書店で立ち読みした程度である。新書の『現象学』も読み通していないと思う。反哲学など、かなり興味深い話だった。そしてその通りだと思う。そういう学問を、大学の中で出来るのだろうか。先生はすでに隠退されている身だし。小林秀雄が『本居宣長』でやってのけたような学問に惹かれる。それは、特別な設えられた場を必要としない、今ここにおいて、対象にひたすら傾注して行くような、そういう作業に思える。『小林秀雄の恵み』を書いた橋本治さんの仕事もそうなのではないだろうか。小林秀雄は、講演の中で自分のことを文士と言っていた。肩書きでも、職業でもない。何かの権威によって守られているのではないものに、自分をかける仕事をしていくことに関心がある。